金と女が降ってきた物語

金と女が降ってきた物語―私が〇職になれた理由③ ~「既にある」んすよw~

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張り付く平昌冬季五輪が始まりましたね、2日前に。私が個人的に注目していますのは、何と言っても女子ジャンプの高梨沙羅ちゃんであります。おっと、見ず知らずの大人の女性に「ちゃん」付けとは失礼が過ぎました。しかし、4年前のソチ五輪で4位に終わり、競技後のインタビューで涙をこらえて言葉を絞り出す、あのあどけない少女の姿に涙腺が緩んだ身としましては、もはや私は一族に1人はいる職業不詳の親戚のおじさん的な心境なのです。今季の不振に化粧やらベンツやらを絡めて彼女を批判する声も多く聞かれますが、メダルという結果でもってそれらの雑音を吹き飛ばしてくれることをおじさんは願ってやみません。〇職ですみません。

 

他に気になることと言えば、スピードスケートの高木姉妹ですかね。元の職場では妹の美帆か姉の菜那かと下世話な論争があったのですが、私は少数派の菜那派でした。当然、応援の熱量は姉妹平等で、その他の日本人選手らの健闘も祈りましたところで本題に入りたいと思います。

雨のコンビニで、実に庶民的な葛藤から世界の仕組みらしきものに気付いた私ですが、そこから意図せずさらに議論が飛躍していきました。

「自分がした設定に基づき世界が展開していく……やとすれば、会社に行かなければお金を稼げないというのもただの設定やないやろか?w せや、会社に行かずともお金が入ってくるという設定に書き換えたろw ワイ、天才過ぎてむせび泣くwww」

ウォーリー(知らない人は「ウォーリーをさがせ!」で検索)を見つけた時のような高揚感が、私に潜在していた天性のニート根性を呼び覚ましたのです。

そこから、同じコンビニの店内であるはずなのに、どことなく景色が変わったような感覚に襲われました。常識や観念という憑き物が取れたような、森鴎外の「舞姫」ではないですが、初めて自由の風に触れたような気がしました(「舞姫」でそういうくだりがありましたよね?)。今思えばその時、「今」にあったのだろうと思われます。

自分の設定で世界がその見せる顔を変えていく、「自分=世界」とはこういうことかと妙に独り合点し、そうなるともう無双状態です。

「お、あそこに傘あるやんw てか、買ってもないのにもうワイのもんになってるw おいおい、まだ金は払っとらんでw でも、既にワイのもんになるという確信があるんやw 傘にワイの名前が入ってるわけやないのに、ワイの認識で傘がそのように振る舞ってくれよるw あー、世界がワイやから元々ワイの中にあるんは当然かw 所有の概念テキトー過ぎワロタwww」

すかさず私は傘を手に取り、レジの店員に預けました。すると、私の後ろに一人の客が並んできましたので、

「あの傘、俺のなんすよw 会計まだなんすけどw」

と、親切に伝えてあげました。

この客とのやり取りはもちろんフィクションですが、私はようやくコンビニから脱出し、帰路へと就きました。そこには店へ飛び込む以前とは別な自分がありました。もはやそれは、一介の貧乏リーマンではなく、旅人・中田英寿氏をも凌駕するほどの自由人です。

もう数十メートルで自宅に着くかというところで、私はある異変に気付きました。右肩の後方辺りの新品のビニール傘の表面に何やら紙片が付着しているのです。まさかと思い、家に駆け戻って確認してみますと、

「新渡戸稲造さんじゃないっすかw」

なんと、5千円札がどこからともなく降り注ぎ、私の傘に不時着するという奇跡が起きたのです。このエゴでは理解しがたい出来事をきっかけとして、私の人生が〇職という航海へ大きく舵を切り始めました。 (続く)

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