皆さん、龍涎香(りゅうぜんこう)というものをご存知でしょうか? 英名はアンバーグリスと言い、マッコウクジラがエサを消化できずに排泄した結石が、海上を数年間漂うことで生成される香料の一種であります。見た目は石のような固体ですが独特の芳香があり、商業捕鯨が禁止された現在では偶然でしか手に入らず、大変な高値で取引されているそうです。その龍涎香を私は自身のお気に入り番組『開運!なんでも鑑定団』のサイトで知ったのですが、サイトでは過去の鑑定依頼がデータベース化され、「OPEN THE PRICE」というボタンをクリックすると、その鑑定額と鑑定士の総評が表示される仕組みになっております。龍涎香もその鑑定依頼の中の一つで、データベースには偶然にも龍涎香らしき固体を海岸で拾ったという依頼者の「2500000円」という強気の本人評価額も添えてあり、それは吹っ掛け過ぎだろうと思いながら、私は「OPEN THE PRICE」のボタンをクリックしました。
番組同様の演出で、鑑定額が一の位くらいから順に開示されていくのですが、驚きの鑑定結果は……「500円」でした。どうやら本物の龍涎香ではなかったそうです。では、ただの石だったのかと総評に目をやりますと、冒頭から
「これはイカ」
と書かれてあり、妙なシュールさを覚えてしまいました。それを踏まえて依頼品の画像を見てみますと、確かにイカな気がしてきました。ついでにイカが食べたくなりました。興味のある方は「龍涎香 なんでも鑑定団」でヤフってみてください。
さて、前々回に私は皆さんが願望が叶っていないという前提に立ち、それを叶えようと日々あくせくしているという在り方が習慣化していると書きました。これはつまり、願望の実現には現状からの変化が必須であるという認識に立っているとも言えます。
私も当ブログで口酸っぱく内面の変化を奨励していますが、具体的にどのような変化であるかを申し上げますと「(既に)願望は叶っている」「(これから)勝手に願望は叶う」といったもので、そういった内面形成から導かれる在り方とは、現状からの変化を求めない在り方なのです。
願望は叶っている、または勝手に叶っていくのが現状なら、そこから変化を求めようという発想は出てこないのです。「変化を求めていない在り方=叶っている(叶う)状態」なのです。もうおわかりかと思いますが、これは「現実に囚われようが、何を考えようが今の自分のままでいい」と許していく自愛にも繋がり、なってしまえば現実に起きることは全て叶った後の世界であるという「なる」そのものなのです。
他のメソッドも出発点としては内面の変化を求めていくものですが、行きつく先は「叶っている(叶う)から今の自分のままでいい」という境地です。アファメーションは内面に理想を強引にねじ込んでいくやり方ですが、継続していけばその理想が思い込みから在り方に転換し、変化を求めなくなります。思考の観察も、「叶っていない」というエゴの判断を根拠のないものだと看破するもので、「叶っていない」がなくなれば何かをする必要がなくなるのです。また、メソッドそのものとしての効果よりも、メソッドをしている自分の立ち位置に気付いたことで、願望を叶えたなんてパターンもよく耳にしたりします。
どのアプローチであっても、その土台は「自分=世界」です。自分の在り方が鏡のように世界と照応しています。鏡(世界)には屈折なく自分の在り方がそのまま反映されるのであれば、叶えよう(変わろう)とする在り方の矛盾にいつかは気付かなくてはなりません。願望が叶って「変化を求めていない在り方」を欲しているのに、つい無意識に「変化しようとしている在り方」に。あくまで現実は在り方(内面)の飾りなのです。
今、願望が叶っているとすればどのような心持ちで、どのような視点で現実を眺めていますか? その在り方を指針にして、日常の自己の在り方を立ち止まって顧みてみるのもいいかも知れません。